「また管理費が上がった」の裏で、何が起きているのか
「毎年HOA費用が上がっていく」「次の更新でいくらになるか怖い」 ハワイにコンドを持っている方から、こういう話をよく聞きます。
でも「なぜ上がるのか」を正確に把握している方は、意外と少ないです。
原因のひとつははっきりしています。保険です。ラハイナ火災(2023年)以降、ハワイのコンド保険市場は想像以上のスピードで崩れています。保険会社がハワイから手を引き、残った会社が条件を吊り上げる、その煽りをHOAが受けて管理費に転嫁しているのが今の構図です。
2025年に新しい州法が加わったことで、この構図がさらに変わり2026年現在も状況は継続しています。現地に20年いる立場から、今起きていることをお伝えします。
保険料が$235,000から$1,200,000になったコンドがある
2025年のハワイ州議会で成立した Act 296 と Act 110 は、ともに保険に関する法律です。内容はそれぞれ異なります。
市場崩壊を食い止める緊急措置 Act 296
法律の原文には、ワイキキのある高層コンドで年間保険料が$235,000から$1,200,000に急騰した事例が実名なしで挙げられています。さらに、免責額(Deductible)がかつての1ユニットあたり$10,000〜$25,000だったものが、最大$250,000まで跳ね上がったケースも報告されています。
標準的な保険会社がハワイから撤退する中で、州が動きました。ハワイ物件保険協会(HPIA)の引受け範囲を拡大
これまでラバゾーン(溶岩地帯)限定だった州立保険機関が、保険市場が機能不全に陥っているコンドミニアム全般を引受けできるようになりました。ただし最長60ヶ月(5年間)の時限措置です。法律自体が「緊急避難的措置」と明記しています。
②修繕費用のための低利融資プログラムを新設
老朽化した配管・屋根・スプリンクラーの修繕費用を賄うため、総額$2,000万のコンドローンプログラムが創設されました。銀行融資を断られた管理組合が申請できます。
③ハリケーン救済基金(HHRF)の資本増強
従来の「特別住宅ローン記録料」を廃止し、不動産登記1件あたり最大$44の一時的記録料(30〜36ヶ月限定)を新設。費用を幅広く分担する仕組みです。
「突然キャンセル」を少しだけ防ぐ Act 110
Act 110はシンプルです。住宅用不動産の保険会社がキャンセル通知を出す期間を10日から20日に延長しました(2026年1月1日施行)。※コンドミニアムも住宅用不動産に含まれるため、キャンセル通知期間延長の対象です。
ただし保険料未払い・重大な虚偽申告によるキャンセルは従来通り10日のままです。
20日に延びても、ハワイの今の保険市場では代替を見つけるのが難しいケースがあります。余裕が増えたことは事実ですが、受け取ってから慌てる状況は変わっていません。
「自分のコンドは大丈夫か」チェックしてほしい5つのこと
保険料が上がっているのは「うちのコンドだけ特別」ではありません。ハワイ全体で起きていることです。ただ、影響の大きさは建物によって全然違います。
- 築年数が古いコンドほどリスクが高い。オアフ島だけで築35年以上のコンドが700棟以上あり、修繕が遅れているほど保険を断られやすくなっています
- HPIAへ移行したコンドはすでに保険料が急騰している。HOAからの連絡を見落としていると、気づかないまま管理費が上がっていることがあります
- ファニーメイ・フレディマックの基準を満たさない保険内容だと、買い手がローンを組めなくなる。将来売却するときの問題が、今の保険内容に潜んでいます
コンドオーナーが今すぐ確認すべき5つのポイント
こういう状況で「何をすればいいか」を聞かれたら、私はまずこの5つを確認します。そのままHOAや管理会社への問い合わせにコピーして使ってもらえます。
1. HOAのマスターポリシーの免責額(Deductible)はいくらか?
$100,000を超えていたら、超過分はオーナー個人の負担になります。意外と把握していない方が多い部分です。
2. HOAが民間保険を断られ、HPIAや二次市場(Surplus Lines)へ移行する動きはないか?
移行しているならすでに保険料は急騰しています。HOAからの連絡は必ず確認してください。
3. 建物の修繕状況(配管・屋根・スプリンクラー)は現在の引受け基準を満たしているか?
未修繕のまま放置されていると、HPIAを含むすべての保険引受けを断られることがあります。築年数が古い建物は特に要確認です。
4. 個人のコンドオーナー保険(HO-6)で、マスターポリシーの高額な免責額をカバーできているか?
免責額が$250,000に上がったケースもあります。HO-6の補完範囲が追いついていないと、いざというときに大きな自己負担が発生します。
5. (購入検討中の場合)対象物件の保険内容がファニーメイ・フレディマックの融資基準を満たしているか?
満たしていなければ、将来売却するときに買い手がローンを組みにくくなります。購入前に確認しておいて損はありません。
CPAに相談する前に、自分で把握しておくべきこと
税務や収支への影響については、信頼できるCPAに相談するのが正解です。
ただ、CPAは過去の数字を扱うプロであって、「あなたのコンドが今、配管の修繕遅れを理由に保険を断られるリスクがあるか」という現地のリアルタイムな状況まではわかりません。
私の周囲でも、更新時に保険料が30〜50%跳ね上がったという話を複数聞いています。日本から遠隔で管理していると、HOAからのメール一本を見落とすだけで、気づいたときには選択肢がなくなっていることがあります。
CPAに相談する前に、建物の今の状態と保険の現状を自分で把握しておく。それがハワイの資産を守る上での最初の一歩だと思っています。
2026年のハワイのコンド保険はどう動く?
- ワイキキの高層コンドで保険料が$235,000→$1,200,000に急騰した事例が法律原文に記載
- Act 296で州立保険機関(HPIA)がコンドの保険引受けを開始。ただし最長5年の緊急措置
- 修繕が遅れているコンドは保険加入を拒否される可能性がある
- コンドローンプログラム(最大$2,000万)が新設。修繕費用の低利融資が受けられる
- Act 110で住宅保険のキャンセル通知期間が10日→20日に延長(2026年1月1日施行)
- 保険市場の長期安定策については保険局が2026年・2027年に議会へ報告予定
参照リンク
Act110 住宅保険のキャンセル通知期間を10日→20日に延長
Act296 HPIA拡大・HHRF資金補強・記録料$44・コンド向け州ローンプログラム創設
免責事項
本記事は2025年ハワイ州施行法案の一般的な情報提供を目的としています。税務・法律上の具体的な判断についてはハワイ州認定の弁護士・CPAへのご相談をお勧めします。法案の詳細・施行日はhawaii.govの立法情報ページでご確認ください。

